漫画家を目指す人向けに、知っておいたほうが良いと思うことをまとめました。
自分は漫画家ではないので、実体験ではなく調べた内容や自分の考えが含まれています。
(おかしな点や気づいたことなどあればコメントいただけると助かります)
漫画家を目指す人のお役立ちになれば幸いです。
目次
- 漫画制作の流れ
- 漫画制作に求められる能力
- 漫画制作の関係者
- 漫画を仕事にする
- 漫画家の収益と倍率
- 漫画の種類
- その他
- 私はどうするか
1. 漫画制作の流れ
- 原案・・・設定を固めて「プロット」(物語の大筋・構想)を作る
- キャラクターの性格設定や世界観、ストーリーの構成(起承転結、 三幕構成)をまとめる
- ネーム・絵コンテ作成・・・原案を漫画に変換する(吹き出しのセリフやストーリーの流れをコマ割りにしたページに落とし込む)
- 下描き・・・ネームを原稿用紙に下描きする
- ペン入れ・・・下描きを清書する(枠線、吹き出し、キャラクター、背景、など)
- 仕上げ・・・最終仕上げを行う(ベタ塗り、トーン処理、ホワイト修正、など)
上記内容は、漫画を完成させるための流れになります。
その時の状況によって、漫画作成以外にも対応する内容が増えます。(担当編集と打ち合わせをしたり、指摘内容を反映したり、取材したり、印刷したり、単行本の表紙を描いたり)
2. 漫画制作に求められる能力
最低限求められる能力
漫画制作の流れから、次のような能力が求められます。
- 想像力(1.原案)・・・魅力的な作品の土台。キャラと設定が重要(価値)
- 構成力、演出力(2.ネーム・絵コンテ、3.下書き)・・・漫画にする。何を伝えたいのか、クライマックスまでの流れや魅せゴマ、セリフ、などが重要(表現、選択)
- 画力(4.ペン入れ、5.仕上げ)・・・読者に最も近い接点。感情や動きなど「伝わる+魅力」が重要(共感、没入感、快感)
あるとさらに良い能力
- コミュニケーション能力・・・担当編集やアシスタントとの円滑な進行や取材などに役立つ
- 人生経験・・・創作がリアリティになる、人気になりそうな事が想像できる
上記能力が苦手だから漫画家になりたいと思っている人もいると思いますが、結局これらの能力は漫画制作でも優位に働くことが多いと思います。(私も苦手意識があるので辛いです)
必要だけど自分で操作できない能力
しかし、運は完全に操作できないわけではないではありません。
打席に立ったり、チャンスをいつでもつかめるよう準備をしたり、一部影響できる要素は残されています。
操作できないことは残酷ですが、言い訳にも使えます。
自分の責任ではなく他の要因の責任できることで、必要以上に傷つかなくて済みます。
(その反面ダラダラ続けてしまう危険も含んでいます。売れない芸人など夢追い人の宿命かもしれません。)
そもそも人気漫画家を目指さなければ、運は必要ありません。
なぜなら、漫画を描き続けるかはあなたが決めることだからです。
つまり、漫画を描くことに何を求めるかで運の必要性が決まるとも言えます。
とは言っても、社会に承認されないと物理的な生活や精神衛生的に厳しいことには変わりません。
「運」を気にしないためには「経済力」や「悟り力」が有効になるかもしれません。
その他
漫画能力検定 とういうのがあるようです。
能力を客観視するための指標に使えるかもしれません。(連載できるか、売れるかは別のお話。漫画家になるために必須となる資格ありません)
3. 漫画制作の関係者
漫画家
漫画を描く人です。作品の責任を負います。
原作と作画が分かれることもあります。
原作は原案〜下書きなど上流を担当し、作画はペン入れ〜仕上げなど下流を担当します。
(原作は原案だけでそれ以降は作画だったり、範囲はまちまち。求められる能力が分割できるので自分が向いている領域が尖っていれば、分担することでクオリティまたはスピードの向上が期待できます。)
分業方式によっては著作権の権利者になれるかも影響します。(キャンディ・キャンディは権利関係で揉めていたようです)
プロダクションを立ち上げて法人化し、分業して作品制作に当たる体制もあります。(斎藤・プロダクション、ダイナミックプロ、など)
仕事の分類として、商業漫画家、Web漫画家、広告漫画家、個人漫画家などがあります。
分類 |
概要 |
例 |
メリット |
デメリット |
商業漫画 |
出版社と契約して漫画を描く |
少年ジャンプなど |
読者が多い、 担当編集がつく、 掲載料がもらえる |
競争が激しい、 激務になることが多い |
Web漫画 |
出版社やベンチャー企業などと契約してweb掲載の漫画を描く |
少年ジャンプルーキーなど |
ハードルが低い |
人気がないとまともな収入にならない |
広告漫画 |
企業や自治体の依頼で漫画を描く(イラスタレーターやビジネス向き) |
チラシ、新聞、SNS、ホームページ、YouTube(商品説明、など) |
単発で仕事ができる |
単行本になることがない、 自分の名義がでない、 制限が多い |
個人漫画(同人漫画) |
自費で本を作り、即売会や電子書籍で頒布・販売する |
自費出版、同人活動、など |
全部自分で決められる、 利益率が高い |
やることが多い、 安定した収入を得ることが困難(赤字になることも多い) |
掲載先は「漫画雑誌・一般雑誌・専門書籍・新聞・Web」などがあり、出版物は「紙の単行本・電子書籍」などがあります。
アシスタント
漫画家をアシストする業務を行う人です。最低限の画力とコミュ力が必要です。
(現場によっては、イラストソフトも使えるようになっている必要があります)
アシスタントの主な担当作業は、背景や効果線入れになります。
具体的には、ペン入れ、ベタ塗り、ホワイト、消しゴム、トーン貼り、効果線、など仕上げの作業の補佐です。
アシスタントの平均年収は220万円くらいですが、優秀なアシスタントは600万円以上のようです。
編集者(担当編集)
読者の代表としてプロットやネームに対しアドバイスをする人です。漫画の完成度を高め、商品として成立させるための責任を負います。
芸術思考の新人漫画家は敵対しがちですが、対立するのは良いアプローチではありません。
漫画家をプレイヤーとすると、編集者はマネージャーに近い存在です。
編集者は、漫画の完成度の向上、業務支援(情報提供、取材手配、スケジュール管理、コンプラチェック、など)、漫画家の心身ケア・育成など、漫画家が漫画制作に集中するための環境を提供してくれます。
一般的な編集者は、商業誌の出版社に勤めているので漫画が利益になるかをドラスティックに判断します。
他
グラフィックデザイナー・・・雑誌や単行本の表紙の着色やデザインなどをサポート
4. 漫画を仕事にする
商業漫画で連載するには
漫画雑誌や出版社が企画する新人賞で賞を受賞し、連載ネームが審査に通ると連載できるようです。
(学歴や国家資格を必要としません。漫画の専門学校もありますが賛否両論あるようです。)
次のような流れが一般的かと思います。
- 出版社に持ち込む
- データ送付や郵送より、直接持ち込むほうが編集者から意見をもらいやすい
- 月例賞を目指す(月例賞は難易度低め)
- 月例賞を取ると担当編集がつく(「1.持ち込み」で担当がつくこともある)
- 新人賞で佳作以上を目指す
- (佳作以上を取った後)連載用ネームを提出する
- 連載用ネームを担当編集及び連載会議でOKをもらう
- 連載決定
または、同人活動をきっかけに連載を狙うのも一般的かと思います。
(同人活動とは、一次創作(オリジナル創作)もしくは二次創作(既存作品創作)の活動。同人=同じ考えの人・同じ趣味の人)
その場合、4まで(もしくは6まで)スキップできる可能性があります。
SNSやPixivなどで知名度が上がって作品に人気が出ると、出版社から連絡が来るようです。(恋愛漫画、エッセイ、体験談漫画が多い印象です)
アシスタントをすることで、漫画創作のレベルアップが期待できます。
プロの漫画家の仕事の流れや原稿と触れ合うことで、漫画創作の解像度が上がり自分一人では経験できない能力が身につきます。
Web漫画で連載するには
ジャンプルーキーなど、誰でも投稿できるプラットフォームがあります。
(漫画とみなせる、不適切な表現がない、など最低限のチェックはあるようです)
掲載料は得られませんが広告収入を得ることができます。
しかし、広告収入は「数十円〜数百円/月」くらいかと思います。
掲載料をもらうには商業漫画と同様に審査があります。
商業漫画と同様に持ち込みから開始したり、投稿漫画が人気になることで掲載料をもらって連載することができるようです。
掲載媒体を雑誌にするかWebにするかは、担当編集と相談して決めていくことになると思います。
広告漫画の仕事を受けるには
イラストレーターや漫画家を募集している会社に所属したり、漫画家向けの求人サイトやクラウドソーシングサイトで単発の仕事を請け負うのが一般的かと思います。
具体的には、次のようなクラウドソーシングサイトがあります。
また、商業漫画家として活動していると広告漫画の制作依頼が入る可能性もあるようです。
個人漫画を収益化するには
オフライン活動では、「コミケ」や「コミティア」と呼ばれる販売会を利用するのが一般的です。
出版社に発行を依頼して「自費出版」をすると全国に流通できますが、制作費用を負担を著者自身が行うため費用が莫大になります。
オンライン活動では、電子書籍などインターネットダウンロード販売が一般的かと思います。
具体的な個人出版(ダイレクトパブリッシング)には、次のようなサービスがあります。
他にも、noteなど有料記事やメンバーシップ、Youtubeなどで漫画配信など間接的な収益方法もあります。
収益化については、次の記事がまとまっていてわかりやすかったです。
漫画家になるための有効な活動
個人的に次の活動が有効かと感じました。
- 持ち込み・・・作品を商品にするための評価
- 漫画賞に応募する・・・商業誌で連載するための手段
- アシスタント・・・漫画能力の向上
- SNS活用・・・営業としての武器
- 同人活動・・・販売できる場所
一番重要なことは、作品を完成させて人に見せること!
5. 漫画家の収益と倍率
|
平均年収 |
トップ層年収 |
倍率 |
備考 |
商業漫画 |
406万円 |
推定31億円(尾田栄一郎先生/ONE PIECE) |
1/100※1 |
アニメ、映画、ゲーム、グッズ、など単行本以外での収益あり |
Web漫画 |
? |
推定6億円(遠藤達哉先生/SPYxFAMILY) |
誰でも |
半分以上は収益化できていないと思われる、人気があれば商業漫画に近いメリットも受けられる |
広告漫画 |
350万円※2 |
インフルエンサーだと数千万円以上? |
1/2程度? |
フリーランスで稼ぐにはブランディングが必要 |
個人漫画 |
? |
数千万円以上(杉谷庄吾【人間プラモ】先生/映画大好きポンポさん) |
誰でも |
コミケの壁サークルでも数千万円の売上があるよう |
※1.1/100・・・漫画賞の受賞確率で計算(8/856≒1/100 応募総数856本! 歴代最多の8本が受賞した第4回漫画脚本大賞、結果発表! | マガポケ)(連載を持つ漫画家は、日本全体で5,000人いると言われている)
※2.350万円・・・会社に所属した場合の年収を想定
6. 漫画の種類
漫画のジャンル
全体と新人賞の人気ジャンルを抜粋。(ジャンルの分け方が曖昧で一部重複しています)
- 全体の人気ジャンル
- 青春・学園
- 恋愛・ラブコメ
- ギャグ・コメディ
- ヒューマンドラマ・歴史
- サスペンス・ミステリー
- 格闘・アクション
- スポーツ
- ファンタジー
- SF
- グルメ・料理
- ホラー
- 体験談・エッセイ
- 新人賞の人気ジャンル
漫画の形式
漫画の形式を抜粋。(連載漫画を目指すときの最低限の形式です)
- 1コマの風刺漫画・・・イラストレーターに近い、扉絵など
- 4コマ漫画・・・漫画雑誌、新聞など幅広い
- 1話完結型漫画・・・読み切り漫画など
- 長編ストーリー漫画・・・連載漫画など
商業漫画雑誌
商業漫画雑誌を抜粋。(雑誌数が多すぎて全部は無理でした。独断で抜粋しています)
商業漫画の発行頻度
- 週刊誌・・・毎週掲載(激務だが短期間で人気になりやすい)
- 月2回刊誌・・・月に2回掲載
- 月刊誌・・・月に1回掲載
7. その他
10代でデビューした人気漫画家
調べられた範囲で抜粋。(レジェンド過ぎて参考にならない)
漫画家 |
デビュー漫画 |
デビュー年齢 |
備考 |
石ノ森章太郎 先生 |
二級天使 |
16 |
|
小畑健 先生 |
CYBORGじいちゃんG |
17 |
16歳の時に「500光年の神話」で手塚賞準入選 |
ゆでたまご(原作:嶋田/作画:中井) 先生 |
キン肉マン |
18/17 |
|
矢沢あい 先生 |
あの夏 |
18 |
|
手塚治虫 先生 |
マアチャンの日記帳 |
18 |
|
30代以上でデビューした人気漫画家
調べられた範囲で抜粋。(40代から漫画家を目指し人気になる人は少なそう。20代でデビューし、30代以上で人気になる人は結構多い気がする。(SPYxFAMILYの遠藤達哉先生など))
8. 私はどうするか
商業漫画での連載を目指しつつ、個人でも活動しようと考えています。
機会があればアシスタントにも挑戦するかもしれません。(アシスタントを経由せず連載できるのが理想ですが)
商業漫画は数年目指して連載が難しそうであれば、同人活動に注力しようかと思います。(担当編集に見切られるまでは連載を目指し続けたい、拗らせないためにも個人の場所も用意したい)
同人活動では、漫画制作に拘らず映像制作など表現の場所を変えるかもしれません。(漫画はレッドオーシャンなので、唯一無二になれるニッチなポジションを探すかもしれません(内田慎之介先生のマンガライブペイントとか))
私の夢は、自分の漫画がアニメ化してスロット化して万枚を出すことなので、できるだけ商業誌で連載を狙い続けたいと思います。